物言い三昧番外編:3

大阪で格安ホテルに泊まってみました

〜GLAYのお陰で見つけた物件〜


このところ、毎年1〜2回は大阪に出向くようになりました。
関西近辺のイグアナオーナーが集うオフ会に参加するのが目的なのですが、なんかこう、上澄み液をしゃくって舐めただけでも「ディープ」な味がする大阪。今回も夏のオフ会に行ってまいりました。
開催日は、2004年7月31日。
後で気付いたUSJのGLAYライヴの影響で、1ヶ月も先だと云うのに、既に大阪市内のめぼしいホテルは満室。あちこち検索し、web上で満室表示だったホテルにダメもとで電話をかけたら予約OK。
予約したホテルは『ホテル関西』
シングルで4,000円台。
安。
梅田に近いから、泥酔しても帰れそう。周りは風俗店が軒を列ねてるから、迷ったら呼込みのおっさんに聞こうっと。

さて当日。
予定時刻を少し過ぎて兎我野町に到着。路地に入って程なく、思いきりでかい『ホテル関西』のネオン看板。角を曲がってちょっとすえた匂いのする通りに。少し歩くとまたネオン看板。こりゃ迷う方が無理だよ。
そして到着しましたホテル関西。
昔『VOW』か何かで見た覚えのある「鳴楼海螢」巨大提灯に涙をこらえつつフロントへ。

「3時の予約してました※※※※(本名)です」
「はい。…※※※※さんですね。こちらにお名前・住所・電話番号を書いて下さい」
渡された宿泊帳に記入。
「はい」
「では代金4,410円になりますので、5,000円お預かりします」
「お?」
先程の宿泊帳。良く見ると“ご宿泊帳兼お預り証”となっていた。
お預り
「差額はチェックアウトの時にお返しします」
…ええとそれわつまり、チェックアウトせずに帰っちゃう人がいるってことでしょうか?
有料チャンネル代踏み倒したりとか。
「はい、じゃ5,000円です」
お預り証の控えと部屋の鍵を受け取る。
「お部屋は別館の方になりますので、玄関からいったん外へ出て向かいのビルに入って下さい」
「そと?」
「はい。外へ出て向かい側に入り口があります」
「あ、そこですね」
「あ、それから夕方4時頃まで熱いお湯が出ませんので」
…インドのホテルだって、お湯くらいはちゃんと出たぞ。
鍵を持ったまま、通りを隔てて向かいの別館へ。…てっきり向かいのビルの業務用搬入口だと思っていた所が、別館のフロントだった。

フロント誰もいねえ。
無人のフロントの横には、2つ3つ売り切れランプの付いた自動販売機と、“宿泊者用”と書いたコインランドリー。そしてすぐエレベーター。ちょうど設備会社の人とおぼしきおっちゃんが、エレベーター前で待っていた。
これって「不法侵入者ようおこし」状態だな。
6階で降り、狭い廊下を歩いて部屋の前へ。鍵を差し込もうとして唖然。
…普通の家の鍵よりしょぼい。あまりその業界詳しくないけど、多分2秒でピッキング出来るんじゃないか?
急いで鍵を開け部屋に入り、ドアをロック。
ドアノブ
…うわあ。昔の便所の鍵みたいだよう。しかも“まん中のつまみをひねって水平に”とあるけど、なんか斜めだよう。
まあ良い。どうせ宿泊客のほとんどは、全国から押し寄せたGLAYファンだ。恐るるに足らん。訳の分からない自信を胸に振り返ると…

狭っ!!
部屋
下調べして、部屋が狭いと云うことは覚悟していたが、恐ろしく狭い。部屋の大半がベッド。TVを見ようとしたら見下ろさないといけない。
しかも窓がないぞ?そこの青い鉄扉は避難口か?まさかこれが窓だって言うなよ。
窓…窓でした。
しかも外は下の階の屋根部分になっていて、隣の部屋と全部繋がっている。夜這いさんようおこし。
天井を見れば、スプリンクラーの配管に、作りもんの蔦がびっしり。
配管配管むき出しの方がどんなにか良かろうに。
とりあえず汗を流すため浴室に。部屋が狭いだけに、既製のユニットバスがえらい広く見える。湯は出ないが水でいいや。ひとしきりシャワーを浴びたところで、
…シャンプーがなーい。
ボディソープのお徳用ポンプがあるのみ。これで洗えと。
服を着替え、脱いだ服は洗面台で洗って部屋に吊るす。集合時刻まで小一時間あるのでTVをつける。有料チャンネルに繋がったら、見る見ないに関わらず1,000円徴収されるらしいので、気を付けてリモコンを操作。
さすが大阪、ほとんどの局に吉本の芸人が出ている。しばし感心して見ていたら、突然画面が消えた。
もうこの程度で心を揺らしている場合ではない。スイッチは入っているので、内部の接触不良だろう。放置してジュースを買いに行った。

さてもうすぐ集合時刻。無人のフロントを出て、本来なら本館のフロントに鍵を預けるのが筋だが、もはやどうでも良くなり、鍵を持ったまま集合場所に向かう。

「kajikazさん、宿は?」
「あ、すぐ近くです。ホテル関西」
「…ホテル関西って云ったら、…そこの大融寺(註:兎我野町の隣)のとこの?」
「そうです」
「いやあ話には聞くけど、あそこに泊まった人って初めて見た」
「…さいですか」
ちょっとだけ「えへん」という気分だ。

(中略)

深夜2時、風俗店の黄色とピンクの灯りに沿ってホテルに帰る。別館のフロントに人がいたのでちょっとびっくりしたが、こんな時間に無人だったらもっと嫌か。売り切れランプの増えた自動販売機で冷たいお茶を買って部屋へ。
シャワーを浴びた後、汗とビールとワインで汚れた服を浴槽に放り込んで踏み洗い。TVの台風情報を見ているうちに、何かその辺りで記憶がなくなり、気付いたら朝7時。
トイレに入ってひゃあと叫ぶ。
てっきり干したと思っていた服が一式、浴槽に浮いていた。
チェックアウトまで3時間。フロントの乾燥機を使えば早いのだが、1本しかないジーンズも洗ってあるので、部屋から出られない。ズボンプレッサーなんか当然ない。絞れるだけ絞って、バスタオル・フェイスタオル・掛け布団・シーツ・浴衣と、使える布は全部使ってひたすら踏み乾燥。こんなことをやっても気にならないのが、安宿の良さだと自分に言い聞かせる。
10時前には何とか生乾き程度になったので、そのまま履いて行くことにする。チェックアウトをしに本館フロントへ。

…『GLAY EXPO 2004』の袋を抱えた若い娘さんがひしめいていた。すっかり忘れてたよ。
チェックアウトを済ませ、差額を受け取る。
「こちらが割引券になりますので、次に来られる時にお使い下さい」
優待券“ご宿泊優待券・15%OFF”。
これ以上何を安くするつもりだホテル関西。

まあともあれ、“目的が他にあって、宿にはこだわらない”という人には十分だと思いますよ、確かに。
でも、GLAYのせいでよそが満室って云う異常事態じゃなかったら、多分泊まることはなかったろうなあ。
こんなネタを提供してくれたGLAYに、心から感謝だ!(やけくそ)


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