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2008年2月7日

電話で『孝』という漢字を説明できない人に初めて出会った(電話だけど)。
別に素人の一般家庭に電話した訳ではない。上場の、一般に名の知れた会社に電話して、その電話に出たおねいさんが、である。

「漢字でですか……、ええと、土を書いて、ぴやっと長い線を引いて、子供の子です」
……一瞬わたくしの頭の中で、よく分からない記号が形成されていく。
「土は、土へんですか?それとも上に書くのですか?」と聞いてみる。
「ええとあの……、うーん、考えるに似た字です」
なんだ、『孝』じゃないか。
「ああ分かりました。親孝行の孝ですね」と確認すると先方曰く、

「……おやこうこう………?」

もはや「親孝行」という言葉は死語化しつつあるのか。そのターニングポイントを見た思いであった。


2008年2月22日

お昼の通勤時間。いつも乗る車両が混んでいたので最後尾に移動したところ、そこに電動車椅子の人がいた。
年は50歳代。グレーの長髪をオールバックにして後ろで束ね、肘掛けにジョージア缶コーヒーをセットして、黙々と新聞を読んでおられた。
よく分からんがうむ、紳士である、と思った。
いつもこの時間にこの車両に乗っていたのか、たまたま今日のこの時間だったのか、どちらにせよ、あまりにその立居振る舞い(座ってるけど)が慣れていると云おうか堂に入っていると云おうか、とにかく「はまっている」のである。
紳士は黙々と新聞をめくっている。
あまりじろじろ見ても失礼なので、それ以上見ずにいるうちに市内中心部の駅。
紳士は停車から逆算するように新聞をたたみ、流れるように車椅子を切り替え、ホームへ降りてまっすぐ消えて行った。
かっこいい。
かっこ良過ぎる。
思わずぱっぱかぱーぱかぱっぱぱっぱかぱーと「サンダーバード」のテーマ曲を口ずさんでしまった。そうまさに「出動」という言葉がぴったりな去り方だったのだ。
あんなかっこ良く車椅子を操る人を初めてナマで見たぞ。混雑のおかげで、ちょっといいものを見る事が出来た。怪我の功名とはこのことだなふっふっふ。とまあそんな感じでいい気分で仕事につく事が出来た日であった。

…ところで何もんだ?あのおっさん。


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