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2013年8月5日

紙屋町地下街で、白杖を持った男性と年配女性が出会い頭に衝突するという場面に遭遇。
たまたま私は男性の10mほど後ろを歩いていたのだが、脇道との合流地点で男性は左折、女性は右折で正面からではなく肩と肩がぶつかった形で。
男性はバランスを崩しながらも立て直したようだったが、60歳代と思しき女性は人混みの中でそのまま倒れてしまい、しかも膝をしたたかに打ったのか、ごん、と結構な音が。あらら大変だと思い、すぐに女性の所に駆け寄り「大丈夫ですか?」と声をかけた。
倒れた衝撃でウォーキングシューズが片方脱げていた。
「ええ奥さん大丈夫なんですよ、すみません」と小柄でやわらかなおばちゃん。「膝が悪いところをまた打っちゃってね」と右膝をさすりながら苦笑い。
「結構、強うに打っとってじゃないですか?痛かったでしょう?」
「まあでも、向こうが杖持っとっちゃったけん、しょうがないですよね…」
「あ……」
そう。私が駆け寄った時には既に、白杖の男性はいなくなっていたのだ。何かちょっとこう、色々とやるせないといいますか。どっちが悪い以前にまず相手の心配をしないか。
実はその少し前にその男性について「この人、全盲ではないのかもしれないな」と思うところがいくつかあり、しかも私が追いつけないスピードで往来を歩いていたのだ。ただ目の具合とか白杖の正式な使い方とか知らないので、それを挙げても仕方ないが、仮に全く見えないとしてもぶつかった衝撃くらいは分かるであろう。それはもう障害が云々とか以前の問題なわけで。もしかしたらぶつかった直後に「すみません」くらいは言ったのかもしれないが。所用でものすごく急いでいたのかもしれないが。
何かこう、どう言ってよいのか分からぬまま、「どうもありがとうございました」と立ち去る女性を見送るしかできなかった自分が何とも歯がゆく、その後の仕事中にふとあの光景が蘇って、何度も涙が出て同僚に心配される始末。
だって何もしてあげられなかったんだよう…。
せめてあのおばちゃんの膝の具合が悪くなっていませんように。


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