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2016年9月16日

虫の音の季節である。アレ松虫が鳴いている、チンチロチンチロチンチロリンというやつだ。
実は今の場所に引っ越すまで、松虫の声を聞いたことがなかった。
仕事帰りに通る川沿いの植え込み。コオロギに混じって「テッテレレー」「テッテレレー」と聞き覚えのない音が。
ネットで色々調べてみてアレが松虫の声だと知った。どう聞いてみてもチンチロリンじゃないじゃん。「チッチロリー」ならまだ分かる。コロコロやリーンリーンと比べて再現度低くないか松虫。
まあそれはよい。

虫の「声」とは云うが、ヒトやトリみたいに喉から発声するのではなく、その多くは羽や腹などを高速で動かして音を出すのだという。
仕組みは分かるがあの小さな体であの大音量であの美しい(美しくないのもいるが)音を出し続けるのがどうしても理解出来ない。
その疑問に答えるべく立ち上がったのが小学生の頃に買った小学館か学研の雑誌、に付いてきた「虫の鳴き声のメカニズムを貴様らに教えてやる(意訳)」というふろくだ。
ミシン目に沿って厚紙を切り取り、ああしてこうして表面に凹凸をほどこし、もうひとつのパーツを押し当ててこすると音が鳴るようにして完成。
はた目には細長い色付き厚紙が2本と、スズムシやコオロギの姿からは程遠いが、仕組みを理解するには単純な方が良いということか。
さてこする。ギロギロと鳴る。なんか思ってたのと違う。
うむ。
スピードを上げてこする。ちょっと高くギロギロと鳴る。
ううむ。
ギロという楽器の名前の由来は分かった。だがわたくしの知りたいのはギロではなく虫だ。小さな虫が羽をこするだけでどうしてあのように美しい(美しくないのもいるが)音が出るのかということだ。「夏休み子ども科学電話相談」でおともだちが知りたいことと先生の回答にしばしば乖離が起きる点だ。仕方がないのであろう。
ものの本には1秒間に何百回とか何千ヘルツとか書いてある。高速でこすらないと無理だということは分かったが、このギロギロを高速でこするときれいな音が鳴るのか。その筋力はどこから来るのか。摩擦熱が発生しちゃわないのか。熱くないのかコオロギ。そういえばクイッカという楽器もあるな。ギロといいクイッカといいオノマトペそのまんまか。チンチロリンよりは忠実だな。やっぱりあれはテッテレレーだよな。段々とりとめがなくなって気がつけば陽が落ちて、あゝ面白い虫の声。


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