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2016年10月24日

自分の考えを改めない人というのがいる。
主義主張をコロコロ変えるのは良くないと思うのか、負けだと思っているのか。
自分はビビリなので、何かを言おうとしても「もしかして自分の方が間違ってたらどうしよう」とか考えて、何か裏付けとなるものをと探しているうちに話題が変わっていたりする、常にそんな人生。まあそれはどうでも良い。
職場で毎日お客様のお問い合わせ・苦情を電話で受けているのだが、そのほとんどが「自分は悪くない。お前が悪い」というお客様である。
パソコンで言うところの「何もしてないのに壊れた!」とかいうアレだ。
そういう人に理詰めで説得しようとしても、聞いてくれないので意味がない。
そういうお客様にはまず「ふんふん、あーそりゃ難儀でしたなあ、分かる分かるうんうん」と相づちをしながら話を聞いていくのだ。解決を急いではいけない。何かそうしていくうちに、不思議とお客様の態度が軟化していく、そこを狙って、
「あんたさっきここをこうした言うとりんさったけど、実はそこじゃのうてこっちなんよ」
「ありゃ、ほうじゃったんか」
「分かりにくうて手間取らせてすまんかったね」
「いや、こっちこそすまんかった。ありがとうね」
とかなるのが快感なんですけど、あくまでうまく行けばの話。
他人ならほとんど一期一会、たまに人格否定レベルのクレームを浴びたとしても、仕事が終われば切り替えておうちに帰ればよい、のですけれども。

うちの父。
自分の子供に対して「勉強して・就職して・結婚して・子どもを作る」以外の人生を一切認めてくださらない。父がたいへん子煩悩なのでまあそれは分からぬでもない。加えて田舎特有の「付き合いの固定化」ってやつで、やれ誰が結婚したの、子供が出来たの、孫が何人いるだのという話にどうしてもなってしまうのだろう。 ちょうどばあちゃんの命日もあったろうから、たぶん親戚一同集まって何かしら言われたのかもしれない。
今のところきょうだいの中で私だけが結婚しており、最後の「子ども作る」ステージまでクリア出来てればよかったのだろうが、仕方ない。すまんね。
ただちょっと厄介なのが、いくら仕事を頑張って信頼や実績をあげようとも、「結婚出来なければ無意味」という揺るぎない価値観を持っているのだ。それはたとえ我々の誰かがなにか偉い賞をもらったとしても覆ることはない。
なぜなら父は我々の成果など興味がないから。
「結婚しない・子どもを作らないうちの子らはつまらん」とはっきりおっしゃるのだ。
当然そんな父に理詰めで説得して通じるわけもなく。あげく私の弟のことを取り上げては「お前からも“結婚せんとつまらん”と言え!」とおっしゃる。
弟は縁もゆかりもない離れた地でひとりで仕事をしている。地域の人らとも交流し、同業の方々とのイベントにも積極的に参加して、その地域のために頑張っているのだ。そんな弟に向かって、生きるだけでいっぱいいっぱい時々休みなこの私から「つまらん」とかどうして言えようか。
弟がどういう思いなのかは知らないが、少なくとも自分は別に今さら親に認められないとも思わない。ただ、真面目にやっている人間を、結婚していないというだけで「つまらん」と言い放つのはたとえ親でも許さない。「周りが結婚しているからお前も結婚しないとしめしがつかん」とかそんなの知ったことか。「うちの息子はこんなに頑張っている」と何故言えないのか。

…父からの電話を聞きながら、いろいろと面白くない秋。

みんな。生きろ。


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