うさぎ縦横無尽

『うさぎで一杯』web版

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第1回:うさぎという名でイグアナで

うちのグリーンイグアナの名前を聞いた人は、10人中10人が「何で“うさぎ”なんだ」と言う。まあまっとうな反応だといえるが、そう聞かれたところで当の本人らが命名理由を知らないので答えようがない。
変な名前を付けたかった。
村上春樹のエッセイに出てくる定食屋『うさぎ亭』から。
某マンガに登場する『うさぎ』という名のうさぎから。
『美少女戦士セーラームーン』の主人公の名前から(脈絡はない)。
「うさぎ」という響きがいいから。等々。どれも○だしどれも×だ。

『グリーンイグアナ¥1,980〜』
我々が結婚した年の8月、我が家に届いた近所のショッピングセンターの広告。普段熱帯魚しかいないペットショップの、夏休みの客よせ企画だ。他にはノコギリクワガタだの(決してオオクワではない)、ミドリガメだの(決してリクガメではない)もいる。前々から漠然と「イグアナが飼いたい」と思っていた我々は、天からの授かりものとばかりに急いで現場へ向かった。
…思うツボとはこういうことである。
さて、いざ行ってみたら、ショップのさほど目立たないところに彼等はいた。なんだ、大した目玉だったわけではないのか。
狭いケージに10数匹の子イグアナが詰め込まれている。夫と私はケージ前に陣取った。
「いーねー」
「どれにする?」
「思ったよりおとなしいよ」
ほとんどの子は隅の方で固まっていて、動いているのは数匹だった。…この場合、じっとしてる奴の方がいいんだろうか?私が悩んでいると、夫が一言。
「こいつ」
指差しているのはごそごそ動いていたうちの1匹。
「なんで?」
「今俺の顔じっと見よった」
そんだけかい!と思ったが、他に決め手もないのでその子をもらうことにした。
2,380円也。別に購入した小さな鳥カゴ(これもどうだか)に入れてもらった。
環境が変わって緊張しているのか、カゴの中の子はじっとこちらを見ている。
最初に「うさぎ」と呼びかけたのはどちらなのか、今となっては思い出せないが、その瞬間からその子は「うさぎ」と呼ばれることになる。
これからどんなことになるのか、夫も私も、もちろん知る由はない。象徴的なシーンだった。
とその時、小さな女の子がすれちがいざま叫んだ。
「カメレオンだー!」

先行き、少々不安になった。

【イグアナ通信No.3(1997年7月20日発行)掲載分】


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