うさぎ縦横無尽

『うさぎで一杯』web版

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第2回:つまってゐます

うちのイグアナは水を飲まない。
“うさぎ”という名前がよくないのかどうかは知らないが、飲まないというより水そのものを嫌悪しているようにさえ思える。
水分不足を補うために我々ができるのは、1日数回の全身スプレーと、水気の多い野菜を食事に加えてやることくらいで、それでも頻繁に水を飲む個体から比べれば水分不足は否めない。便秘になるのは当然である。
現在うさぎの排便回数は1〜3日に1回、毎日続けてという事はまれである。何とかしてやれというお声が聞こえそうだが、何とかしてようやくこれなのである。過去には5日出なかったということさえあった。60cm水槽で、寝場所も食事もトイレも一緒くただった頃のことだ。知らないとはいえひどい話である。そりゃ出るものも出ないだろう。腹をさすったり暖めたり、挙句の果ては『タケダ漢方便秘薬』を練り餌に微量加えたりもした。結局その時は何かの拍子で出たようだが、傍目にも気の毒であった。
やがて温室に引っ越した時、まずうさぎは何よりも先にトイレの位置を確定した。温室から6mも離れた台所の一角にトイレを構えたのである。…よっぽど嫌だったんだろうなあ。
さて、それからは心機一転で快便ライフ満喫、といきたいところだが、それでも便秘はやって来る。気が付けばトイレに連れて行ったりするのだが、少しすると戻ってくる。
苦しくはないんだろうか?人間でも1日出なかったら腹が張ってしょうがないのに(余談だが、うちの夫は慢性の便秘症である)。
とか何とか考えていたある日、うさぎが妙な格好をしているのに気が付いた。
うさぎの寝場所に提供した流木、ちょうど腹に当たる部分が出っ張っている。普段はそれをよけて寝たりくつろいだりしているのだが、その時はわざわざ出っ張りを腹に押し付けてじっとしていた。何をしているんだこいつは。
やがて何かを思い出したように温室から飛び出して、そのまままっすぐトイレへ向かって行った。
…しばらく土をかき回す音がした後、スリムになったうさぎがスキップで戻ってきた。
そう。あの妙な行動は、彼の便秘対策だったのだ。人間がヨガの便秘ポーズだのツボ押しだのをするのと全く同じ要領である。
彼は彼なりに悩んでいたのだろう。いとおしいぢゃないか。
それからはこちらもあまり神経質に構えないようにした。食事と温度に気を付けて、出なかった翌日は、勝手に便秘体操をさせればいい。…たまにトイレにいく途中で便意が失せて、おずおずと引き返してくることもあるけれど。

【イグアナ通信No.4(1997年10月15日発行)掲載分】


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