うさぎ縦横無尽

『うさぎで一杯』web版

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第10回:2度目のお引っ越し

前回この頁で、大家さんの話を掲載してもらった。うさぎが大家さんを嫌いで嫌いで、もう引っ越すしかないのかと、冗談のつもりで書いたのだが、それが載ったイグ通を、まさか新居で読むことになろうとは、Y2Kの注意リストにも挙がってなかったであろう。
本当に引っ越してしまったのである。
5年間で3度の引っ越しというのは多すぎるとは思うが、別に好きでやってるわけではない。そう、引っ越しは大変なのである。家中のあらゆるものをまとめ、バラし、詰め、くくり、積み上げ、運ぶ。体力的、精神的、金銭的にこんなに疲れることはない。しかもイグアナまでいるのである。
新ミレニアムの幕開けに、まだ世界が浮かれていた2000年1月9日、引っ越し当日。この度の引っ越しは、業者は全く通さず、すべて友人たちに手伝ってもらったのである。人海戦術、10数人の人間が入れ替わり片っ端から運び出していく。お陰でどれだけ助かったかしれない。多謝!
…さて、その時うさぎはと云うと、刻々と変わる室内の状況と、動き回る多数の人間(髪の短いメスや髪の長いオス、ごついの細いの大きいの小さいの)を前に、暴れはしなかったものの、興奮していることは傍目にも明らかであった。一体こいつをどう運ぶのか。これが今回の引っ越しの最大のテーマである。大袈裟か。いやマジですって、ほんま。
ところで、うさぎにとって今回は2度目の引っ越しである。
何が違うかというと、前回はまだ小さかった。60cm水槽に住んでいて、発情もしていなかった。秋口なので、短時間ならさほど気温に神経質になることもない。水槽ごと持ち上げて運べば済んだのである。
対して今回はどうか。
でかい。重い。サカってる。温室もあるし、おまけに寒い。午後には雨も降ってきやがった。最悪のコンディションである。
ここで、うさぎを運び出すのに必要最低条件は3つ。人目に触れないこと、うさぎをパニックに陥れないこと、十分な保温を施すこと。この条件を満たすため我々がとった方法は、うさぎが落ち着くのを待って、夜一気に運び出すということだった。
夜8時。新居で待機していた我々は、バンに乗ってうさぎの元へ向かった。メンバーは夫と、私と、今回うさぎの引っ越しを一番楽しみにしていた、友人のMさんの3人である。
引っ越しの手順は、まずうさぎを温室から出して、保温材を入れた大きめの段ボール箱に納め、温室もろとも一気に運び出して終わり、の予定だった。
…うさぎが落ち着くのを待って、だと?
ぎんぎんに起きてるんですけど。
まず私がうさぎを温室から連れ出し、その間に残りの2人に温室を積み込んでもらった。あとはうさぎを箱に入れてと云う時、彼の緊張はピークに達したらしい。捨てられると思ったのか、狭いのが嫌なのか、或いは単に寒くて体温を求めたのか、とにかく凄まじい勢いでしがみついてくる。このままでは体温が下がってしまう。しばらく考えた末、部屋の明りを消して真っ暗にし、うさぎの動きが止まったのを見計らって、半ば強引に箱に納めたのである。
温室の方は、当初分解する予定だったが、思いのほか手間がかかり、結局ヒーターやガラスなど、はずせる物だけはずして、そのままバンの荷台に積むことになった。ただ、はめ殺しのガラスが残っていて危ないため、だれかが支えていなければならない。かくして夫が運転、私がうさぎ入り段ボールを抱え、後ろでMさんがヨガ行者よろしく、ものすごい姿勢で温室を抱えるといった状況で、雨の中ようやく帰還するのであった。新居で留守番していた友人I君にも手伝ってもらい、温室を部屋の中に設置、ヒーターも入れて、無事うさぎを温室に戻したときは、もう10時になろうとしていた。
とりあえず今日はこれでいい、家中段ボールだらけで、寝るのもままならないが知ったこっちゃない。うさぎが生きてここに来れただけでいい。これこそが、今日の最大のテーマだったのだから。
やはり大袈裟か。
…Mさんは、いつもぼーとしているうさぎが、あからさまに怖がっていたのを見て、ある意味で感動したという。
『生き物を運ぶって、大変なんだねえ』
はい、大変ですとも。これが1匹でつくづく良かった。
『もう当分引っ越しはやだー!』と私。
夫が言う。『前の引っ越しのときも言うたよなあ』。
全国のイグアナオーナーの皆様。 引っ越しはやっぱり大変です。
覚悟してね。

【イグアナ通信No.11(2000年9月10日発行)掲載分】


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