うさぎ縦横無尽

『うさぎで一杯』web版

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第12回:ショップについて

40×30×10cmのプラスチック容器。うさぎとその仲間達はこの中にいた。
10cmというのはもちろん容器の高さで、その上に脱走防止の網がかぶせてある。いくら小さいとはいえ、このスペースに10数匹のグリーンイグアナの子ども達が入れられていたのである。当時は何も知らなかったので気がつかなかったのだが、色々な人達の体験談などを読んでいるうち、圧倒的なまでに最悪であったなと思うようになってきた。
そのショップは、大型スーパー2階の片隅にあった。とはいえペットショップとは名ばかりで、普段は小型熱帯魚と小鳥が数種類いるだけ。専門の知識を持った店員がいるわけでもなく、休日でも店内は閑散としていた。これが夏休みやゴールデンウィークなどの書き入れ時には状況が一変、亀だのフェレットだのハムスターだの、普段いないはずの動物達のケージが、空きスペースに可能な限り陳列されていくのだ。もちろんグリーンイグアナも押さえてあって抜かりはない。抜かりがあるのは店員と我々の知識だけである。
--何に入れて飼えばいいですか?
「鳥かごなんかでいいと思いますけど」
--何を食べるんです?
「さあ、レタスやキャベツとかでいいんじゃないですか?」
今考えると寒気がする。何も勉強せずに買おうとする方にも問題はあるが、そんなお馬鹿な客に正しい情報を与える義務がショップにはあるのではないか。このショップの方針は正にバーゲンのワゴンセールである。それに乗せられて買いに来たのが我々であるのは言うまでもないが。
…あの日うさぎと一緒にいた仲間のうち、何匹が買われていったのか、残った子達はどうなったのか、考えたくもない。
けれども充分な飼育環境を揃えているショップは、残念ながらまだほんのわずかである。流行っているから、目玉になるから売るという事だけは絶対してほしくないし、ましてやゲームの景品にするなど言語道断というものである。

…それから数年が経過。うさぎ自身は、自分がかつて入れられていたプラスチック容器よりはるかにでかくなり、うさぎがいたショップは動物が消え、ペットフード売場になっていた。そして、うちから程近い所に総合ペットショップがオープンした。
メジャーな動物はもちろん、温度管理された別室にはイグアナやアガマやリクガメ達が元気に動き回っている。ケージも清潔で、草食トカゲには新鮮な野菜が、肉食トカゲには生きのいいコオロギが与えられている。
広島のペットショップ事情もやっとこのレベルまで来たかと安堵の思いで、にんじんに食らいつくリクガメの子を眺めるのだった。
…にんじんがちょっとでかいけどな。

【イグアナ通信No.13(2002年3月15日発行)掲載分】


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