うさぎ縦横無尽

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第4回:うさぎの春1997(後編)

イグアナの雄は、発情期には狂暴になる、とものの本には書いてある。こういう記述を見て私は、発情期の雄が日がな一日暴れ回って手当りしだいに噛みつき、家具を破壊したりなんかしている姿を想像し、覚悟を決めていたのである。だとすると、うちのうさぎの「変」な行動は一体何なのだろう。発情期の行動だとすると、「凶暴」というより「おまぬけさん」としかいいようがないのである。というのも、1日1回だけ我々の体に登って四肢で腕にしがみつき、袖口をくわえて固まってしまうのである。私の頭の中で「家具破壊の図」が揺らぎはじめた。

「股間を押しつけていらっしゃいますが」 「そうですね」

不安になった我々は、ついに山内さんの師事を仰ぐことにしたのである。質問をFAXで送り、待つこと数日、郵便で丁寧なお答えが返ってきた。間違いなく発情期の雄の行動であり、対処法として、皮手袋やイグアナ人形などで相手をするという例もあるとの事であった。
そこで思い出したのが、交尾中のイグアナの写真。これを参考にして、近い姿勢をとって見ることにした。とはいえ我々が押し倒されても物理的に少々無理があるので、あの皮手袋に再度登場を依頼した。

まず、うさぎをこちらに向かせた状態で手袋をはめた手の上に乗せ、袖口を噛ませて固定しておく。次に自分の指の股でうさぎの尾の付け根を軽くはさむようにし、おもむろにどちらか片方の指(ここがポイント)を真直ぐ上に向ける。ちょうど雌が自分の尾を高々と上げたのと同じ状態である(注:この当時のSVLは25cm)。
…するとあら不思議。すっかり勘違いしたうさぎが、立てた指(=雌の尾)に股間を押しつけ、脚で押さえ込んだではないか。しかも何か凄い物が出て来たぞ。ヘミペニスか?いつものと形も色も大きさも違うぞ?う、うさぎが黄色くなっている!!!本当に大丈夫なのか?
我々はまた山内さん宛にFAXを送り、皮手袋を使っていることを報告した。今度は夫がFAXを送ったと思われる時間から間もなく(家にはFAXがないので、夫が仕事場から送っている)、に電話がかかってきた。山内昭さんからである。
「皮手袋で相手をしてあげているそうで」
「はい」
そこで、どんな風にやっているのか(指をああしてこうして)、何を参考にしたのか(例の写真)、緊張しながら説明したのである。山内さんは笑って
「色々研究してらっしゃる様ですね」。それは天からの声に聞こえた。途端に全身の力が抜けていくのが分かった。ああ、我々のやったことは間違いではなかったのだと。
「また何かあったら報告してください」
「どうもありがとうございますう!」。
すっかり私は興奮してしまっていた。うさぎ!今山内さんから電話があったぞ!もうこれから何があっても大丈夫だぞ!うさぎ!

うさぎ!?

彼は既に熟睡していた。

【イグアナ通信No.6(1998年6月10日発行)掲載分】


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