うさぎ縦横無尽

『うさぎで一杯』web版

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第3回:うさぎの春1997(前編)

いつでもどこでも発情できる人間と違い、人間以外の動物の発情期というものは、なかなか神秘的である。ある日突然音もなくやって来て(音があれば心の準備 も出来そうだが)、嵐のような日々が過ぎて、いつの間にか終わっちゃうという。…神秘的とか言った割に、お茶らけた表現しかできないのがなんだが。
うちのうさぎの場合も然り。彼の「春」は、1997年1月16日の夜に始まった。何で具体的な日時があるのかというと、明らかに「変」だったので、私がメ モを取っておいたのである。もちろんその時は、それが発情行動であるということは知る由もなし。

その日も、「ニュースステーション」が終わって「気をつけ」で眠っているうさぎを、カーテンレールから温室に移す作業に取りかかっていた。夫が椅子に上が り、皮手袋をつけて、いつもの調子でうさぎを持ち上げようとしたその時。うさぎが手袋に噛みついたのである。いや正確に言うと、手袋の指の先っちょを「は みっ」とくわえたのだ。起こされて威嚇しているのかと思ったが、何か違う。それっきり動かないのである。
 「うさぎ?」動かない。
 「うーさーぎー」動かない。たたいてもゆすってもだめ。
 「おーい」よく見ると、目の焦点が合っていない。意識が飛んじゃってるのだ。夫は動くに動けず、とりあえず手袋を口から外そうとするのだが、これが全く 取れない。噛まれたことのある人は分かると思うのだが、イグアナには口唇にそって細かいギザギザの歯がついていて、これで噛まれると相当痛いし、なかなか 取れないのだ。
…さてどうしたものか。仕方なくそのままにしていたら、5分ほども経ったろうか。うさぎがふと我に帰って口を開けたのである。何度もまばたきをして(さっ きまでほとんどまばたきをしていなかったのだ)、口をなめながらこっちを見ている。
 「うーん君達、何かあったのかなあー?(訳)」
彼自身、何が起こったのか理解できていない様子である。ともあれその日はそれっきり何も起こらず、「なんかまぬけだったねー」と言うだけで深く考えること もなかった。ただあまりに「変」だったので、その日の家計簿の隅にメモを残したのである。

『1/16 うさぎ固まる』

まさかこれが嵐の発情期の始まりで、しかもこのことがきっかけで山内ご夫妻のお世話になろうとは、その時誰が予想し得たであろう。一体この後梶山家に何が 起こるのか?
…次回、乞う御期待!!!

何だ、続くのか。
(後編へ)
【イグアナ通信No.5(1998年1月20日発行)掲載分】


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